2008年5月30日金曜日

ロシアと天燃ガス4:欧州パイプライン


 ロシアと天燃ガス4:欧州パイプライン
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ご存知のように1986年にロシアで「チェルノブイリ原発事故」がありました。

 「チェルノブイリの子どもたち」を書いて「広瀬隆現象」なるブームが発生したことはご記憶のことと思います。

 このブームで「原子力発電アレルギー」が一気に噴出しましたが、その後、「温暖化問題」が優先され、「原子力発電見直し」といった世論に傾いてきました。
 しかし、この現象が「原子力発電の安全性向上の推進」に大きく寄与したことはまぎれもない事実です。


 ヨーロッパにおけるこの状況をみてみます。

 2002年当時のドイツの「シュレーダー政権」は、電力業界が原子力から撤退することを認めさせ、1960~70年代に運転を開始した原子炉を廃棄することを決定しました。
 これは、原子力発電所の平均運転期間を「32年間」とし、その後は廃止するというものです。

 ドイツばかりでなく、ベルギーやスウェーデン、スイス、オランダ、ブルガリア、リトアニア、イギリスなど欧州諸国も「脱原発」を志向しましたが、それは欧州の各国が地続きのため、もし原発事故が起こった場合、放射能汚染から逃げられないという危機感からで、とくに環境立国ドイツは原子力に敏感でした。

 2004年のドイツの「電源構成比率」をみると石炭が半分の50%、原子力39%、天然ガスが11%で、エネルギー自給率は約4割ほどで、原子力の欠損分を天然ガスで穴埋めすることになります。

 Wikipediaを見てみる。

 エネルギー
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 2002年現在、ドイツは世界で5番目に高いエネルギー消費国である。
 その3分の2は輸入に頼っている。
 また、ドイツはヨーロッパ一の電力消費国で、一時間につき5129億キロワットを消費している。

 現在、ドイツのエネルギー保護政策を積極的に行っており、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(バイオ燃料)などの再生可能エネルギーの普及を推し進めている。
 その結果エネルギー効率は1970年以降徐々に良くなっている。
 政府は2050年までに国のエネルギー需要の半分を自国で供給するという目標を定めている。

 2000年、政府は原子力発電を2021年までに段階的に撤廃していくことを決定した。
 2002年現在、エネルギー消費の種類別の内訳は石油(40%)、石炭(23%)、天然ガス(22%)、原子力(11%)、水力(2%)、その他(2%)となっている。


 サイトから抜粋で。

★ 【ドイツのエネルギー事情】
http://www.biomass-hq.jp/foreign/germany/overview2.htm

 再生可能なエネルギー利用の重要性は広く認識されており、その利用は年々増加していますが、実際のところ一次エネルギー総消費量にしめる割合はごく僅かでしかありません。
 2003年の時点で3%弱でした。

 現在のところ、一次エネルギーの大半は従来どおり化石燃料と核燃料によって供給されています。
 電力消費に絞って見ると、やはり従来のエネルギーが占める割合が多く、中でも化石燃料の割合は、消費電力の半分以上(2001年度は60%)を占めます。
 原子力発電の割合もまだ30%の割合を占めており、再生可能なエネルギー(ソーラー、風力、バイオマス、地熱、水力)の割合は7.87%に留まっています。

再生可能なエネルギーの潜在可能性と利用状況
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 再生可能なエネルギーの潜在可能性を見ると、その多さに驚かされます。
 現時点の技術力で、利用可能な資源を全て発電に使ったと考えると、現在のエネルギー需要(約570TWh)は全て再生可能なエネルギーでまかなう事ができる試算になります。

 潜在可能性の高さに比べ、現在使われている再生可能なエネルギーの割合は、決して多いとはいえません。
 水力発電だけは、技術的に利用できる可能性をほとんど実現していますが、他の再生可能な資源についてはまだまだ潜在可能性以下です。

 バイオマスに到っては、潜在可能性の2%しか利用されていません。
 2010年の目標は消費電力に占める再生可能なエネルギーによる電力の割合を現在の6,25%から12,5%(現在の倍)にまで引き上げることですが、まだ使われていない潜在可能性を今後伸ばしていけば、充分に可能だと考えられています。


 同じくサイトから抜粋で。

★ 環境にやさしい暮らし
http://www.mars.dti.ne.jp/~saitota/hitori040221.htm

 自然エネルギーを活用すれば化石エネルギーを使わなくとも済むのだ!
 ドイツは風力発電など自然エネルギーが主流となりつつあるなんてことを読み聞くことが多いのではありませんか?
 ドイツのエネルギー割合は実際はどうなのだろうか?
 明日にでも風力と太陽光で間に合うのだろうか?
 実はそんなことではない。
 石炭が50%強、原子力が30%強、残りが天然ガスや石油であり水力がわずか、風力?さあ?

 そういえば「エコロジーだけが経済を救う」というドイツの環境原理主義者が書いた本がありますが、その中で「各家庭に太陽光発電パネルを付けると政府補助によって短期間で元が取れる」というくだりがあります。
 なるほど、政府補助がなければ減価償却は不可能なようです。

 ちなみにドイツはフランスの原子力発電の電気を大量に購入しています。
 自国では「原発廃止」なんて言いいながらそのようなことをするのは「バーゼル条約」違反じゃないかな。 


 原発エネルギーをロシアからの天然ガスに置き換える、これが基本施策です。
 2050年までにその50%を再生エネルギーに置き換えることは目標であっても、おそらくは安価な天然ガスに勝てる見込みはないでしょう。
 20%からうまくいってもい25%くらいでしょう。
 あとは、化石燃料となりそうです。


 イギリスは豊富な石炭や北海油田からの石油・天然ガスでエネルギー自給率は100%を超えていましたが、2000年以降急激に落ち込んで、2010年にはエネルギー輸入国になるであろうと見込まれています。
 電源構成比は天然ガス・石油が33%、石炭38%、原子力26%で、バランスのいい配分になっています。

 
読売新聞(2006年05月31日)から

★ ガスに次ぎ原油まで  純輸入国転落強まる
http://www.gns.ne.jp/eng/g-ken/doukan/agr_310.htm

 イギリスとノルウェーにまたがる北海油田は、1970年代のオイルショックを機に、開発が進められた。
 1980年代中ごろには、生産量はノルウェー分も含め日量300万バレルを超え、非OPEC(石油輸出国機構)原油の中心として、OPECから原油価格決定権を取り戻す役目も果たした。
 最盛期の1999年には日量590万バレルを生産した。

 しかし、2000年以降、急速に生産量が落ち込んでいる。
 ヨーロッパでも数少ないエネルギー輸出国だったイギリスは、2004年から天然ガスの純輸入国に転じた。
 原油も、今年にも純輸入国に転じる可能性が強まっている。この結果イギリスのBBCなどでは、エネルギー自給率は2020年には10%にまで低下すると予想している。          

 すでに、ロイヤル・ダッチ・シェルやBPなど、北海油田に採掘権益を持っていたメジャー(国際石油資本)各社は、権益を他の石油企業に売り渡しており、撤退に踏み切っている。   



 イタリアはチェルノブイリ事故の翌年行われた国民投票で、運転中の3基の原子力発電所が閉鎖され、新たな建設工事も中止されました。
 そのため電力をフランスやスイスから買い入れることになりました。
 ところが、2003年にはこの送電線が切断するという事故が発生し、大停電がおこりました。
 将来のことをほとんど何も考えることのないイタリア人らしい性急な行動の結果ですが、いまイタリアは四苦八苦のエネルギー事情になっています。
 電源構成比は天然ガス40%、石油20%、石炭20%で、自給率は約2割ほどです。
 原子力の減分を天然ガスに振り分けています。


 フランスは日本と同じでエネルギー資源の乏しい国でありながら、
国内でウランの採掘ができたため、いち早く「原子力利用」に取り組み、2004年では電源の85%が原子力で作られており、周辺国に輸出までしています。
 ドイツやイギリスは石炭資源をもっていたため火力発電となり、フランスは石炭はなかったが、かわりに少々ながらウランをもっていたため、原子力利用に積極的となり、エネルギー自給率はドイツよりも大きく50%となっています。

 昭和35年版の原子力白書によればフランスは世界第4位のウラン資源国になっています。

★ 
昭和35年版原子力白書 4-1世界のウラン埋蔵量
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/wp1960/ss1010401.htm


 現在世界でナンバーワンの生産量(埋蔵量は3位)を誇るのはカナダですが、フランスのウランの大半はそこから供給されています。
 これがフランスをしてヨーロッパの「原子力撤退に反旗」をひるがえさせています。
 さらに、2020年までに高速炉(第4世代炉)の運転を開始するとしており、「原子力国家」ともいっていいでしょう(高速増殖炉ではない)。

 AFP・BBnews(
2007年07月25日)から 

★ パリ電力需要に匹敵するウラン産出鉱山 カナダ

http://www.afpbb.com/article/economy/2259223/1886340

 2006年、世界で産出された「3万9429トン」のウランの4分の1が、3つの鉱山、マクリーン・レイク、ラビット・レイク、マッカーサー・リバーで産出された。
 3つの鉱山を所有するのは、フランスの「アレヴァ(Areva)」と、世界最大のウラン製造企業であるカナダの「カメコ(Cameco)」だ。

 3つの鉱山を擁する盆地のウラン埋蔵量は「60万トン」、全世界の「18%」をしめる。
 ウラン鉱石は、鉱山付近の処理場でイエローケーキに精製され、海外に輸出される。
 マッカーサー・リバー鉱山は世界最大の「高純度ウラン鉱」とされ、前年は「7200トン」のウラニウムを産出。
 これはこの年の全世界の産出量の18.3%にあたった。
 マッカーサー・リバーで産出されるウラニウムは全米の電力需要の7%をまかなうエネルギー量に匹敵し、鉱山はカメコが70%を、残り30%をアレヴァが保有している。



 EU本体は2006年1月にロシア政府天然ガス独占企業「ガスプロム」が、ウクライナ経由の天然ガス供給を一時停止したという事態をうけ、天然ガスの安定確保のために、カスピ海沿岸諸国から「ロシアを経由せず」に、トルコブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを経由してオーストリアのウイーンに至る全長「3,300km」のパイプライン「ナブッコ・パイプライン計画」を建設することとし、2011年の完成を目指しています。

 EU15カ国全体での電源構成比は原子力が約4割の39%、石炭が約3割の29%、天然ガスが18%、石油が5%となっています。

 そんな状況が、現在のヨーロッパの各国です。


 ガスプロムはエクソンモービルに匹敵するロシアンメジャーを目指していますが、そのためには外国市場におけるシェアの拡大がひじょうに重要となる。
 国内市場は独占しているとはいうものの、当然のことながら公共事業体でもあるわけで、政府によってガス料金は低く設定されており、収益を上げることができない。

 ガスプロムは数年先のガス供給を安定的に保障することで、欧州でのガス分配網へ進出し、ガスの販路を安定させようとしています。

 そこで、計画されたのが「北ヨーロッパ天然ガスパイプライン」計画。

 ヨーロッパのこれからのエネルギー市場を大きく塗り替える可能性のあるこの天然ガスパイプライン計画は、ガスプロムとドイツ「BASF」グループが進めている巨大プロジェクト。
 年率3.3%で成長し続けるヨーロッパ市場は、ガスプロムにとって喉から手が出るほどに欲しい市場。
 これが完成した暁にはガスプロムの欧州進出が一気に加速されると思われる。

 バルト海経由で西欧に西シベリアの天然ガスを送るパイプラインの具体的なルートは、フィンランド国境近くからバルト海底を通り、ドイツ、オランダ経由でイギリスに至るもの。
 その海底部分の総工費は「約20億ドル」。

 ロシアにとって最大の弱点となっていた従来のルートであるウクライナ、ベラルーシへの通過がこれで回避されます。
 いかにこの両国がロシアにクレームをつけても、この計画は確実に実行されるでしょう。

 ドイツには原子力発電の段階的廃止を決定したため、新たなエネルギーとしてこのクリーンエネルギーである天然ガスの確保をいかにしても達成したいという意図がある。
 オランダも天然ガスパイプラインにつなぐ国内ガスネットワークの整備に積極的な国です。

 そしてその先にイギリスがある。
 アメリカと常に行動を一にしているイギリスにエネルギーを送りこめれば、ロシアにとってはアメリカに対する高得点となりえます。

 成長を続けるイギリスこそガスブロムの最大のターゲット。

 この背景は次のウエブで確認できます。
 なを下記のウエブでは「北ヨーロッパ天然ガスパイプライン」図も参照できます。


★ 石油・天然ガスレビュー 2003/09
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/540/200309_097t.pdf

 北ヨーロッパ長距離国際海底天然ガスパイプライン計画に合意
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 英国とロシアは「北ヨーロッパ天然ガスパイプライン(NEGP)」の建設に関する協力について合意した。

 ロシアのユスホフ・エネルギー相と英国のテイムス・エネルギー相がロンドンで英露首脳会談に際して合意文書に調印した。
 今後、天然ガス生産量の減少が予想される英国がロシアの天然ガスのパイプライン供給を受けることが大きな目的であり、欧州への輸出拡大を目指すロシアも積極的である。

 ラインは一系統。
 「ウィボルグ(ロジア)~バルト海海底~グリスヴァルド(ドイツ)~オランダ~北海海底~英国」、総延長「1200km」。
 フィンランド、スエーデン、デンマークの支線も計画されている。
 パイプラインの主要ソースと見られているのはロシアのYamal半島のガス田で、将来的にはバレンツ海沖合いのShtokmanvskoyeガス田も検討されている。

 今後予想される英領北海での天然ガスの減産に伴い、英国は2005年に天然ガス輸入国になる見込みである。



★ ロシア・ノーボチス通信社発 2005/09/29 No.084
http://www.rotobo.or.jp/jouhoukan/novosti/2005No.084.pdf

 世界の興味を引くバルトガスパイプライン
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 「プーチン・シュレーダー条約」とウワサされる「北ヨーロッパ天然ガスパイプライン(NEG、あるいはNEGP)」の建設協定が、最近ロシアとドイツで調印された。

 従来の「トランジット諸国(既存のパイプラインが通過している国々)」である国々の不満は理解できないでもないが、本プロジェクトは政治的意味合いよりも、経済的なそれの方がはるかに大きい。

 ガスプロムと「BASF」そして「E.ON」は、バルト海域を通っている「バルトパイプライン」の建設の基本協定に調印した。
 本プロジェクトの関係社の資本割合はガスプロム:51%、BASF:24.5%、E.ON:24.5%で、これらの会社はドイツ・ロシア合弁会社を設立する以降を表明している。
 NEGプロジェクト全体を実現するのに必要な合計投資資金は「40億ユーロ」以上とされている。

 NEGラインはドイツの海岸地帯と、ロシアのウィボルグ市地区の海岸を結ぶ。
 ガスパイプラインの陸地への出口はグリスヴァルド市が検討されている。パイプラインの長さは「1200Km」を超える。
 NEGの営業活動は2010年に予定されている。
 そして初期段階のガス搬送能力は年間「275億m3」で、そのための「第1ライン」が計画されている。
 さらにその後、年間最大2倍の「550億m3」に増設するために「第2ライン」の建設が検討されている。

 プロジェクトの目的は、主要生産国であるロシアから、最大需要地である西ヨーロッパに供給するための「直接搬送回廊」を稼動させることにある。
 供給はドイツだけでなく、他の諸国にも及ぶことになっている。

 というのも、この地域におけるロシア以外の供給国(ノルウエイ、オランダ、イギリス)の採掘田が枯渇の一歩をたどっているからだ。

 ロシアもドイツも、このプロジェクトの勝利者と言える。
 現在、ドイツはガスプロムの最大級の輸出市場になっている。
 NEGプロジェクトにより、増大するこの需要に安定供給が確保され、プロジェクトは確固たる立場を築き評判を高めるだろう。

 NEGプロジェクトを通じてドイツはロシアの広大な天然ガス田と直結されることになる。
 これはドイツやヨーロッパ諸国の増大する需要を満たすのに大きく寄与し、これらの国々へのガス供給の安定性を大いに高めるだろう。

 ヨーロッパの公式筋や専門家、マスコミは向こう10年間、ヨーロッパへのエネルギー供給の安定性はロシアとの関係に依存すると指摘している。

 さらにイギリスやオランダ、デンマークなど、いくつかの新しい国々がガスロムのパイプライン網に広範囲に接続することができ、ロシアにもヨーロッパのエネルギー市場参加への可能性が益々大きく開けてくる。

 このプロジェクトは、「エネルギーの国際価格が高騰」している現在だからこそ可能になった。
 現在の燃料価格の高騰は本格的なもので、長期にわたることは明らかだ。

 世界の石油メジャーはロシアのガス採掘、インフラ整備の建設、ガス製油施設設備にも資金を直接投資する準備をしている。


 ガス搬送能力は1ラインにつき「275億m3」という。
 琵琶湖の水量が「275億m3」、気持ち悪いくらいにピッタリ同じ。
 もちろん、これはガス体での話。
 いくらパイプの口径を大きくしても、1年で琵琶湖のすべてを送水できるはずがない。

 タンカーで運ぶときは液化して「LNG」として運ぶ。
 しかし、パイプラインでは気体そのままで「天然ガス」としてパイプに送り込む。
 液体ならパイプラインの勾配が最大の問題になり、貯水塔を造って水をくみ上げ、繰り返し繰り返し圧力のかけ直しをしてやらねばならない。

 しかし、空気より軽い気体ならちょっと圧力さえかけてやれば、少々の凸凹はまったく苦にならずに遠くに運べる。
 それがゆえにヨーロッパ全土の隅々への供給がいとも簡単に可能になる。

 液体と気体とでは比較のしようがないので、一律に液体に直して「LNG換算」としてして検討してゆく。
 液体にすると「1/600」である。つまり、琵琶湖の水量の1/600のLNGが年間搬送量になる。

よって、LNGでの搬送量は「4,583万m3」。
  275億0000万m3/600=4,583万m3

 ドーム単位を計算してみる。
  4,583万m3/124万m3=37ドーム

 年間東京ドーム37個分のLNGがこのパイプラインを通して西側に送られることになる。
 これを2本造るという。74個分になります。

 2本の合計は「550億m3」。
 日本のLNGの年間輸入量が「765億m3」ですから、日本の輸入量の72%ほどの量が、2本のパイプラインでロシアから西ヨーロッパに送られることになる。

 西欧・中欧の天然ガス需要の25%をロシア一国で供給している。
 そのパイプラインの「約80%」がウクライナ、べラルーシの領土を通っている。そこがロシア最大の弱み。

 そこでロシアとドイツは「北ヨーロッパガスパイプライン会社」を設立したということになる。
 ウクライナを通らず、バルト海経由で西欧に直接天然ガスを供給するパイプライン会社というわけである。

 ちなみに、原子力発電を廃棄したドイツのシュレーダー元首相はこの北ヨーロッパ天然ガスパイプライン計画を立ち上げ、政権を退いたあとはちゃっかりとこのパイプラインの会社の役員に納まっています。

 つまり、欧州は天然ガスの供給を「ガスプロムに依存」しつつある状況が作られつつあるということです。
 そして、ロシアはそのLNG東京ドーム74個分の元栓をしっかり握っていくということになり、ヨーロッパを支配下におくような「大国ロシアが復活」しつつあるということになります。

 EUのもう1本のパイプライン「ナブッコ・パイプライン計画」も動いてはいるが、コストは最低でも「73億ドル」と見積もられるため、プロジェクトは建設や資金供給を巡る遅れに直面しています。

 パリの国際エネルギー機関は、ヨーロッパの需要は現在の「5,000億m3(LNG:672ドーム)」であるが、今後20年間に「約7,000億m3」になるだろうと見積もっている。
 また、完成時のナブッコの年間輸送量は「310億m3」と予想している。
 ちなみに、世界メジャーを目指すガスプロムは、この非ロシアのナブッコ・パイプラインにロシアの天然ガスを送り込もうと計画しています。


 なを、NHKのドキメンタリー番組があります。

★ NHK情報ネットワーク 番組 Topics2008 「BS世界のドキュメンタリー」 2008/05/05
http://www.nhk-jn.co.jp/002bangumi/topics/2008/005/005.htm

 「BS世界のドキュメンタリー」
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【シリーズ①  プーチンのロシア】 プーチンはこうして権力の座についた
(フランス Quark Productions制作)
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 海外の優れたドキュメンタリー作品を通して「世界の今」をお伝えする番組です。
 ニュースにはない鋭い切り口と丁寧な取材で、世界で起きているさまざまな出来事の背景に迫ります。

 「プーチンを作り上げたのは私たちだ。ロシアの今の状況は私たちに責任がある。」
 2000年のロシア大統領選挙でプーチン陣営の選対責任者を務めたポノマリョワの言葉でこの番組ははじまる 。
 選挙の一年前には無名だったKGB出身の一役人が、いかにして瞬く間に、ロシア大統領の座にのぼりつめたのか、その経緯を描く。

 事の発端は、クレムリンの改修工事に伴う大掛かりな収賄事件。
 ロシア高官たちのマネーロンダリングが取り沙汰された。
 検事総長のスクラートフが事件を厳しく追及していたが、当時FSB(連邦保安局・KGBの後継機関)長官だったプーチンは、スクラートフのスキャンダルを立証し、彼を失脚させることに成功した。
 これ以降、エリツィンの側近グループ、いわゆる「ファミリー」はプーチンに一目置くことになった。

 エリツィンは後継者を探しあぐねていたが、1999年8月、プーチンを首相に任命。
 プーチンは、連続爆弾テロ事件が起きた時に、報復措置として、素早くチェチェンへの軍事攻撃を開始し、支持率は一気に上昇した。
 エリツィンと近しい新興財閥のベレゾフスキーが、自らが所有するテレビ局の番組で、人気キャスターのドレンコを動員してキャンペーンを行ったことなども功を奏し、下院選挙ではプーチンの党が、ライバルのプリマコフ元首相の党を上回る票数を得た。

 そして突然エリツィンが辞任。
 大統領代行となったプーチンは、「ファミリー」に対する態度を一変、我が道を進み始めた。 その後大統領に就任し、今に至る。
 2期8年を終えようとしている今、後継者を指名したプーチンは、このまま権力の座に居座り続ける様子だ。

【シリーズ②  プーチンのロシア】 ガスプロムの世界戦略(前編)
(フランス CAPA制作)
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 世界の天然ガスのおよそ3分の1を埋蔵するロシア。

 その生産から供給までを一手に担う巨大エネルギー企業のガスプロム。
 時価総額は2,500億ドルを超えると言われる。

 資源外交でロシアの復権を図ろうとするプーチンにとって、最大の切り札ともいえるガスプロムの世界戦略に迫る前・後編。

■前編 台頭する巨大エネルギー企業
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 ロシア政府が株式の過半数を保有し、プーチン大統領の側近が経営の中枢を占める天然ガス会社・ガスプロム。天然ガス生産量世界最大を誇るガスプロムは、ヨーロッパで使用されるガスの25%を供給している。

 2005年、オレンジ革命以降、欧米よりの路線を取り始めたウクライナに対し、ガスプロムはガス料金の値上げを通告。
 ウクライナがこれを拒否したため、 2006年1月1日、ガスプロムはウクライナへのガスの供給を停止し、ウクライナを経てガスの供給を受けているヨーロッパにも影響を与えた。

 その豊富なエネルギー資源を武器に資源大国として復活を遂げたロシアだが、現在、主力のガス田は枯渇しつつあり、ヨーロッパ諸国は、ガスプロムの安定的な生産・供給能力に不安を感じている。

 新しいガス田の発見・開発にもっと投資するべきだという声が高まる中、ロシア政府は、ロシア国内におけるガス料金の値上げを決定した。
 果たして、ガスプロムは、増え続けるヨーロッパのエネルギー需要を満たすことができるのか。
 今まで取材が難しいとされてきたガスプロムの全貌と、その世界戦略に迫る。


【シリーズ②  プーチンのロシア】 ガスプロムの世界戦略(後編)
(フランス CAPA制作)
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■後編 ロシア資源外交のシナリオ
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 ウクライナへのガスの供給停止などをきっかけに、ヨーロッパはガスプロムに依存しないエネルギー供給ルートを確保しようとしている。

 そのひとつが、 SCP、南コーカサス・天然ガスパイプライン。
 グルジア経由で、アゼルバイジャンのガス田とトルコを結ぶ。
 しかし、こうした動きにパイプライン通過国とロシアとの間では緊張が高まっている。
 また、ヨーロッパ各国それぞれの思惑もあり、EUも一枚岩とはいかない。

 そんな中、ロシアは東へと目を向け始めている。
 極東サハリン沖での石油・天然ガス開発計画「サハリン2」の経営権を握ったのを始め、六か国の加盟国とモンゴル、イランなどの準加盟国からなる上海協力機構の枠組みで、エネルギー協力を強化しようとしている。
 また、プーチン大統領は、ガスの輸出国からなるガス OPECの創設にも積極的だ。

 昨年の12月に自らの後継者として側近のメドベージェフ第一副首相を選んだプーチン。
 天然ガスを武器に、国際的な影響力を保とうとする、その巧みな外交戦術を描く。


 これで「ロシアの天然ガスとプーチンの個人資産」についての関係はおぼろげながら理解できたかと思います。

なを、天然ガスをめぐる各国の思惑は下記のウエブに詳しいです。

★ エネルギー覇権を強めるロシア 2007年5月22日  田中宇:記事の無料メール配信
http://www.tanakanews.com/070522russia.htm



 今後のヨーロッパは一方でロシアの天然ガスエネルギーを中心に回っていく。

 OECDの楽観的な西欧式「石油商品論」が、非西欧式OPECの「増産せず」の決定で崩壊する危険性がある今日、ロシアの動向は注目の的になる。

 「増産せず」の決定により、投機資金は石油に回り、オイル価格は高騰を続ける。
 決まった量しか生産しないとすれば、価格は上がる。
 当たり前のことが当たり前に起こったのが、「ガソリンの高騰」。

 オイルの上に乗っているアメリカ経済に与える打撃は大きい。
 アメリカ経済は「湯水のように使える石油」を前提に成立している。
 そのアメリカ経済の投機資金が石油に回って、石油の価格を押し上げている。
 いわば自分で自分の首を締め上げている。
 「大きいことはいいことだ」のアメリカ経済が失速する可能性がある。

 このときにあっての「儲け頭」はいわずと知れた日本。
 「軽薄短小」「省力節源」が国是。
 一時のアップダウンはあっても長期的にみれば日本の勝ち。
 下で見るように現在の日本の海外資産は「過去最高」を記録している。
 未公開のオイルマネーを除けば、世界ナンバーワンである。
 第二位のドイツの倍以上である。
 日本は「不景気だ、不景気だ」といいながら、着実にお金を溜め込んでいる。
 そして世界に分散して、バランスを計っている。


★ 読売新聞 YOMIURI ONLINE (2008年5月23日)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20080523mh03.htm

対外純資産 「過去最高250兆円」  金融ニュース
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 財務省は23日、2007年末の日本の対外資産と負債の状況をまとめた「対外貸借報告書」を発表した。
 日本の政府、企業、個人が海外に持つ資産(対外資産)の金額から、外国の政府、企業、個人が日本に持つ資産(対外負債)の金額を差し引いた「対外純資産」の残高は、前年末比16.3%増の「250兆2210億円」と過去最となった。

 2年連続の増加で、世界2位のドイツ(2007年末時点の円換算で107兆5715億円)を引き離し、統計を公表している国の中では1991年以来、17年連続で世界最大の債権国となったとみられる。
 原油高で中東諸国も対外資産を増やしているとみられるが、統計は公表していない。

 日本の対外資産は、前年末比9.4%増の「610兆4920億円」、対外負債は5.0%増の「360兆2710億円」と、いずれも過去最高だが、対外資産の伸びが対外負債を上回った。

 日本の低金利を背景に、金利の高い外国の債券や株式などへの投資が拡大した。



 21世紀は次のエネルギー技術で動いていく。

 1】.ウランの確保:高度安全基準の原子力発電所の建設
 2】.天然ガスの開発:天然ガス利用技術の向上
 3】.石炭新技術の開発:眠れるエネルギーの再生技術

 「石油は22世紀のエネルギーとして、しめやかに保存されていく」。




<おわり>




【Top Page】




【追記】




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